Single Victory Club Teams

 
Single Victory Club Teams
冒頭写真:
2001年第13戦、ジョーダン・グランプリ、ピットガレージ前の記念撮影。
チームオーナーでチーム売却後テレビ解説者になったエディー・ジョーダン(見事なヅラ)を挟んで、左が後藤久美子との不倫でお馴染みジャン・アレジ、右が2015年フォーミュラE最下位記録保持者のヤーノ・トゥルーリ。
今となっては暗雲立ち込める布陣も、当時は全く新鮮であった。

1回しか勝てなかった男たち列伝 ≪SVCメンバーズ・チームまとめ≫

最終更新:2021年第13戦オランダGP終了時点で加筆修正

SVC 会員全34名の紹介が終わったところで、最後に SVC メンバーズ・チーム(=SVC 会員を複数同時に擁したチーム)をまとめる。
本来「ドライバーが全員 SVC 会員だったチーム」とでも言いたいところだが、以前はチーム1台単独エントリー体制が許されていた時代もあったことから、例えば、複数会員が在籍したチームと一人だけのチームを同列に評価してしまうことになる。あるいは、1台エントリーすることが多かった1980年代までの弱小チームにとって SVC 会員の人気が高かったのは明らか(新人を使うのではなく、ある程度コースを理解している者や、できれば勝てるドラバーが欲しいが、何勝も挙げているようなドライバーはサラリーが高い、また1勝ぐらいしていればスポンサーも見つけ易いだろうといった思惑)なので、まりにも多くのチームが該当してしまうかもしれない。
また、1チームで3台以上のマシン/ドライバーをエントリーできた時代もあり、「ドライバーが2名とも SVC 会員だったチーム」という言い回しもできない。
そこで、「1シーズンに SVC 会員を複数擁したチーム」としたのだが、特に昔の大手チームは多車エントリー攻勢を仕掛けており、SVC 会員を同時に5人擁したなんてことにもなりかねない…と考えてヒヤヒヤした(これも、例えば5人擁したのと2人のチームをどう格付けするのか悩ましい)のだが、データをまとめた結果、最大で2人しか被っていなかったことが判明。
よって、これを記録達成年順にまとめ、レア度とともに詳細を記す。
ちなみに、「1勝だけのチーム(コンストラクター)」はクズマ、ポルシェ、イーグル、ヘスケス、ペンスキー、シャドウ、スチュワート、BMWザウバー、トロ・ロッソ、アルファタウリ、レーシング・ポイント、アルピーヌの12チームだが、クズマはインディ500がF1だった頃このレースのみの参戦、スチュワートは紆余曲折を経て今のレッドブル、BMWザウバーはFIAやF1公式サイトでもザウバー、アルファロメオ・レーシングと同一コンストラクター扱い、トロ・ロッソとアルファタウリは全く同一のチーム、レーシング・ポイントはジョーダン、MF1、スパイカー、フォース・インディア、レーシング・ポイント、アストンマーチンと変遷、アルピーヌはルノー第一期(1977-1985年)、ワークス第二期(2002-2010年)、ロータス・ルノーGP、ワークス第三期(2016-2020年)を経て名称変更したチームといった具合に、その勝利数には多様な考え方があり、ここでは取り上げない。
SVC メンバーズ・チーム定義
まず先に、どういった条件をクリアできれば SVC メンバーズ・チームに該当するのか、その定義を紹介する。

* 「SVC 未加入会員」表記について:
本来、未勝利ドライバー全員が「SVC 未加入会員」に該当してしまうが、以下このページでは「その時点では未勝利だが、将来的に勝利し(やがては SVC に入会し)、その1勝のみで終わった(=SVCを退会していない=執筆時点での現役 SVC 会員)ドライバー」を指すものとする。

* 「現役会員」という表現も混乱を生む可能性がある。「現役ドライバーの中で1勝だけしている者」ではない。SVCの現役会員ということは、1勝した後に2勝目を挙げていない(=退会していない)ドライバーを指す。例えば、1勝した直後に死亡した場合は、未来永劫退会することは叶わず、確実に現役会員となるのである。

1シーズンに SVC 未加入会員を複数擁したチーム
レア度: ★(1)
これが最低基準。生涯F1で1勝しか挙げられなかった複数のドライバーが、例え1戦でも過去に在籍しているチームならOK。在籍時には未勝利であっても良い。また、ドライバーの出走GPが被っていなくても良い。(例)「未勝利の新人ドライバーが途中ラウンドから別のペイドライバーに交代させられたが、後にそれぞれ別のチームで1勝だけして引退した」というようなケース。
1シーズンに SVC 《現役》会員と未加入会員を擁したチーム
レア度: ★★(2)
これは前掲に加え、一人が既に SVC 会員になっている場合。
1シーズンに SVC《現役》会員を複数擁したチーム
レア度: ★★★(3)
入会済み会員が複数在籍した場合。優勝経験者が入れ替わり立ち替わりというチーム事情をお察しください…。
1シーズンに SVC 未加入会員を複数《同時に》擁したチーム
レア度: ★★(2)
これは出走GPが被っている必要がある。将来優勝するドライバーを揃えたチームには、ドライバー選択に先見の明があったことだけは間違いない。
1シーズンに SVC《現役》会員と未加入会員を《同時に》擁したチーム
レア度: ★★★(3)
一人が既に SVC 入会済みで、未加入会員と出走GPが被っている場合。優勝経験者と未勝利ドライバーの組み合わせは輝かしい未来を予感させて然るべきなのだが…。
1シーズンに SVC《現役》会員を複数《同時に》擁したチーム
レア度: ★★★★(4)
既に入会済みの会員の出走GPが被っている必要がある。当時リアルタイムに情報を追っていたファンは「どちらが先に2勝目を挙げるのか!?」とワクワクしたはずの組み合わせ。結局その後どちらも勝てませんでしたとさ…。
《シーズンを通して》SVC 未加入会員を複数《同時に》擁したチーム
レア度: ★★★(3)
シーズン開幕戦から最終戦までを通して同じ未加入ドライバーが出走している必要がある。
《シーズンを通して》SVC《現役》会員と未加入会員を《同時に》擁したチーム
レア度: ★★★★(4)
これは前掲に加えて一方が既に入会済みの場合。
《シーズンを通して》SVC《現役》会員を複数《同時に》擁したチーム
レア度: ★★★★★(5)
レア度満点。1勝しかしていないドライバーを揃えたのにはきっとチームの苦しい事情があるに違いない。一方が複数勝利ドライバーでもいいはずであり、また一人はルーキーというパターンも多くあるだろうに、敢えてのチョイスは渋すぎる。そもそもこの定義からすると、他チームで勝利経験のある両ドライバーがフル参戦したにもかかわらずこのチームでは1勝もしていないということに。そんなチームが実際に存在したのだろうか?したんです。
SVC メンバーズ・チームリスト

* 以下、概要欄の背景画像は各チームのその年のマシン(オンマウス、またはタップで文字が見易くなる)

* 赤字は未加入ドライバーの入会レース

1956年 マセラティ
結果ニアミス
レア度★★
SVC ドライバーピエロ・タルッフィ
1952年開幕戦入会
ヨアキム・ボニエ
1959年第3戦入会
早速、年間を通して SVC 会員2名を含む12名ものドライバーを走らせたチームが登場してしまった。しかも開幕戦と最終第8戦は6名が同時出走している。ところが、タルッフィは第5戦のみ、ボニエは第8戦のみの参戦であり、ニアミスであった。
1956年のマセラティは、「1シーズンに SVC 《現役》会員と未加入会員を擁したチーム」ではあるが、「1シーズンに SVC《現役》会員と未加入会員を《同時に》擁したチーム」ではなく、また当時ボニエは未勝利ドライバーであったことから「1シーズンに SVC《現役》会員を複数擁したチーム」でもない。
1962年 フェラーリ
結果第6,7,8戦で同時出走
レア度★★★
SVC ドライバージャンカルロ・バゲッティ
1961年第4戦入会
ロレンツォ・バンディーニ
1964年第7戦入会
この年のフェラーリからは5人が出走、全員が同時出走したレースも複数ある。SVC 会員2名が同時出走したのは第6,7,8戦。
「1シーズンに SVC《現役》会員と未加入会員を《同時に》擁したチーム」ではあるが、バンディーニが未勝利ドライバーであったことから「1シーズンに SVC《現役》会員を複数《同時に》擁したチーム」ではない。
1963年 フェラーリ
結果ニアミス
レア度
SVC ドライバーロレンツォ・バンディーニ
1964年第7戦入会
ルドヴィコ・スカルフィオッティ
1966年第7戦入会
この年のフェラーリからは4人が出走、最大で3名が同時出走しているが、バンディーニは第2,3,4戦、スカルフィオッティは第7,8,9,10戦のみの参戦なのでニアミス、更に両者とも未加入会員。
最低基準の「1シーズンに SVC 未加入会員を複数擁したチーム」には該当する。

バンディーニは魅力ある走りで人気者、スカルフィオッティはフィアット創設者の孫ということで、以降同じ組み合わせがしばらく続く。
とは言え、バンディーニはジョン・サーティースのセカンドドライバーであり、スカルフィオッティも複数存在したセカンドドライバーの内の一人=3台以上エントリーできた時代の非メインドライバーであった。
よって、SVC 会員データだけ見をると、フェラーリがこの2人をいたく気に入っていたように見えるが、他にも上述のサーティースやクリス・エイモンといった名だたるドライバーが多数フェラーリから出走していることに注意。つまり、希少性は薄い。

1964年 フェラーリ
結果第8戦のみ同時出走
レア度★★★
SVC ドライバーロレンツォ・バンディーニ
1964年第7戦入会
ルドヴィコ・スカルフィオッティ
1966年第7戦入会
この年のフェラーリからも4人が出走。第7戦で SVC に入会したバンディーニは全戦出走したが、未入会のスカルフィオッティは第8戦のみ。
「1シーズンに SVC《現役》会員と未加入会員を《同時に》擁したチーム」に該当。
1965年 フェラーリ
結果第8,10戦で同時出走
レア度★★★
SVC ドライバーロレンツォ・バンディーニ
1964年第7戦入会
ルドヴィコ・スカルフィオッティ
1966年第7戦入会
この年のフェラーリからは6人が出走。前年 SVC に入会したバンディーニは全戦出走したが、まだ未入会のスカルフィオッティは第8,10戦のみ。
「1シーズンに SVC《現役》会員と未加入会員を《同時に》擁したチーム」に該当。
1966年 フェラーリ
結果第6,7戦で同時出走
レア度★★★
SVC ドライバーロレンツォ・バンディーニ
1964年第7戦入会
ルドヴィコ・スカルフィオッティ
1966年第7戦入会
この年のフェラーリからは4人が出走。バンディーニは最終戦以外は全戦出走したが、スカルフィオッティは第6,7戦のみで、この第7戦で優勝、SVC 入会。
スカルフィオッティは晴れて現役会員となった第8戦には参加しておらず、惜しくもフェラーリはこの年も「1シーズンに SVC《現役》会員と未加入会員を《同時に》擁したチーム」を満たすのみ。
1967年 フェラーリ
結果第2戦のみ同時出走
レア度★★★★
SVC ドライバーロレンツォ・バンディーニ
1964年第7戦入会
ルドヴィコ・スカルフィオッティ
1966年第7戦入会
この年のフェラーリからは5人が出走。遂に前年スカルフィオッティが SVC 入会を遂げたが、開幕戦を欠場したバンディーニは第2戦モナコGPで死亡、フェラーリが1962年から6年掛けてようやく手にした栄誉(?)はわずか一戦のみで終わってしまった。
一戦のみとは言え、ついに史上初の「1シーズンに SVC《現役》会員を複数《同時に》擁したチーム」誕生である。
1967年 アングロ・アメリカン・レーサーズ
結果ニアミス
レア度★★★
SVC ドライバーリッチー・ギンサー
1965年第10戦入会
ルドヴィコ・スカルフィオッティ
1966年第7戦入会
この年のアングロ・アメリカン・レーサーズからは6人が出走。第2,3,4,5戦でフェラーリを ドライブしたスカルフィオッティは第9戦のみこのチームから出走、同じ年に2チームの栄誉に貢献。ギンサーも複数チームから出走しているがこのチームでは第1,2戦のみ。
「1シーズンに SVC《現役》会員を複数擁したチーム」に該当。
1972年 BRM
結果2,3,4,5,6,7,9,10,11,12戦で同時出走
レア度★★★★
SVC ドライバーピーター・ゲシン
1971年第9戦入会
ジャン=ピエール・ベルトワーズ
1972年第4戦入会
この年のBRMからは8人が出走。ゲシンは第8戦を欠場、ベルトワーズが第4戦で入会したことから、SVC 現役会員としてのコンビは第5,6,7,9,10,11,12戦での計7戦。
1967年のフェラーリに続く史上2番目の「1シーズンに SVC《現役》会員を複数《同時に》擁したチーム」かつ、1戦のみだった記録を7戦に伸ばした。
1973年 BRM
結果第14戦のみ同時出走
レア度★★★★
SVC ドライバーピーター・ゲシン
1971年第9戦入会
ジャン=ピエール・ベルトワーズ
1972年第4戦入会
この年のBRMからは、ニキ・ラウダ、クレイ・レガッツォーニの大物2名を含め4人が出走。
ベルトワーズは全戦出場したが、ゲシンは第14戦のみ。
この年は1戦のみだったが、前年と合わせ2年連続で「1シーズンに SVC《現役》会員を複数《同時に》擁したチーム」となった。
1973年 チーム・サーティース
結果第9,11,15戦で同時出走
レア度★★
SVC ドライバーホセ・カルロス・パーチェ
1975年第2戦入会
ヨッヘン・マス
1975年第4戦入会
この年のチーム・サーティースからは5人が出走。
カルロス・パーチェは全戦出場したが、マスは第9,11,15戦のみ。
両ドライバーともに未入会であるため、「1シーズンに SVC 未加入会員を複数《同時に》擁したチーム」に該当。
1974年 チーム・サーティース
結果第1〜7戦で同時出走
レア度★★
SVC ドライバーホセ・カルロス・パーチェ
1975年第2戦入会
ヨッヘン・マス
1975年第4戦入会
この年のチーム・サーティースからは7人が出走。
SVC 未入会の両ドライバーが同時出走したのは、第1〜7戦。
「1シーズンに SVC 未加入会員を複数《同時に》擁したチーム」に該当。
1997年 プロスト・グランプリ
結果ニアミス
レア度★★
SVC ドライバーオリビエ・パニス
1996年第6戦入会
ヤーノ・トゥルーリ
2004年第6戦入会
この年のプロスト・グランプリからは中野信治を含め3人が出走。中野は全戦出走したが、パニスは第7戦の事故で以降欠場、終盤3戦に復帰するまでトゥルーリが代役を務めた。
よってニアミス、かつトゥルーリは SVC 入会前であった。
「1シーズンに SVC 《現役》会員と未加入会員を擁したチーム」に該当。
1998年 プロスト・グランプリ
結果16戦全戦で同時出走
レア度★★★★
SVC ドライバーオリビエ・パニス
1996年第6戦入会
ヤーノ・トゥルーリ
2004年第6戦入会
折角の2人揃っての全戦出場であるにもかかわらず、トゥルーリが SVC 入会前であったため、惜しくも「《シーズンを通して》SVC《現役》会員を複数《同時に》擁したチーム」ならず、「《シーズンを通して》SVC《現役》会員と未加入会員を《同時に》擁したチーム」に該当。
1999年 プロスト・グランプリ
結果16戦全戦で同時出走
レア度★★★★
SVC ドライバーオリビエ・パニス
1996年第6戦入会
ヤーノ・トゥルーリ
2004年第6戦入会
前年に続き2人揃って全戦出場。
トゥルーリがそう簡単には SVC に入会してくれないため、またしても「《シーズンを通して》SVC《現役》会員と未加入会員を《同時に》擁したチーム」に該当するのみ。
2001年 ジョーダン・グランプリ
結果第13,14,15,16,17戦で同時出走
レア度★★★★
SVC ドライバージャン・アレジ
1995年第6戦入会
ヤーノ・トゥルーリ
2004年第6戦入会
プロスト・グランプリを途中解雇されたアレジが、同じくジョーダン・グランプリで突如解雇されたハインツ=ハラルド・フレンツェンに代わり第13戦から最終第17戦までの5戦に出場。
全戦出場のトゥルーリはまだ SVC に入会しておらず、(チームもチームメイトも異なるにもかかわらず、2年前のプロスト・グランプリ同様)ジョーダン・グランプリも、トゥルーリのせいで「《シーズンを通して》SVC《現役》会員と未加入会員を《同時に》擁したチーム」に該当するのみ。
2004年 トヨタ
結果第17戦日本GPのみ同時出走
レア度★★★★
SVC ドライバーオリビエ・パニス
1996年第6戦入会
ヤーノ・トゥルーリ
2004年第6戦入会
パニスは第17戦日本GPを最後に引退。
この年、ルノーから参戦し第6戦モナコGPで遂に SVC に入会したトゥルーリは、その後第15戦を最後にルノーから放出、1戦置いて第17,18戦をトヨタから参戦。
よって、「1シーズンに SVC《現役》会員を複数《同時に》擁したチーム」として日本のチームもF1史に名を残すことになった。日本GPの1戦のみとは言え、1973年のBRM以来31年振りの快挙。因みに1973年のBRMも1戦のみの現役 SVC 会員タッグ。
2010年 ロータス・レ―シング
結果19戦全戦で同時出走
レア度★★★★★
SVC ドライバーヤーノ・トゥルーリ
2004年第6戦入会
ヘイキ・コバライネン
2008年第11戦入会
史上初、SVC 現役会員のみを擁して立ち上がったドリームチーム。
例えばこの年、他のGPウィナー2人を揃えた贅沢チームは、マクラーレン、レッドブル、フェラーリの3チーム(これらのドライバーは皆複数回優勝者)。
これに匹敵する!…ことができないのが SVC の SVC たる所以。
「《シーズンを通して》SVC《現役》会員を複数《同時に》擁したチーム」。
2011年 チーム・ロータス
結果19戦全戦で同時出走
レア度★★★★★
SVC ドライバーヤーノ・トゥルーリ
2004年第6戦入会
ヘイキ・コバライネン
2008年第11戦入会
チーム名は若干変わったが、SVC 現役会員のタッグ2年目。
1勝しかしていないと解った上で継続雇用するこのチームの度胸GPウィナーを揃えることでドリームチームのやる気をアピールすることはできた。後は成績がついて来れば良いだけだったが…夢は夢のまま終わった…。
「《シーズンを通して》SVC《現役》会員を複数《同時に》擁したチーム」。
SVC メンバーズ・チーム マシンギャラリー
クリック/タップで拡大表示される画像は、記録が達成された順に各チームのその年のマシンとなっている。
今後の展望
未勝利ドライバーはその全員が SVC 会員候補であるが、SVC メンバーズ・チーム候補となると自ずと絞られてくる。
可能性が高いのは一人が SVC 会員で、そのチームメイトが「2021年現在現役F1ドライバー」という組み合わせで戦ったことのあるチームである。あるいは、チームメイトが「既にF1以外のカテゴリーに移っているが、何らかのカテゴリーでレギュラードライバーを続けている」というチームにも少しは可能性があるだろう。F1に復帰して優勝してくれれば良いのだ。勿論、そんなに簡単な話ではないのだが。
この(他カテゴリーにおいてもレギュラードライバーを引退した者や複数勝利を挙げた者を除外した)視点で見ると、2013年に2戦だけ乗ったヘイキ・コバライネンと、2000年代に入会した会員3人の内唯一 SVC メンバーズ・チーム・リストに登場していないロバート・クビサ、そして2010年代唯一の入会員パストール・マルドナド師匠、2020年代に入会したピエール・ガスリーとエステバン・オコンが在籍したチームに絞られる。

2021年現役F1ドライバー 2021年F1リザーブドライバー 2021年他カテゴリー参戦中レギュラードライバー

チームSVC 会員(通算1勝)SVC 未入会員(未勝利)
2013年ロータスヘイキ・コバライネンロマン・グロージャン
2014年ロータスパストール・マルドナドロマン・グロージャン
2015年ロータスパストール・マルドナドロマン・グロージャン
2016年マノーエステバン・オコンパスカル・ウェーレイン
2017年トロ・ロッソピエール・ガスリーダニール・クビアト
ブレンドン・ハートレイ
カルロス・サインツ Jr.
2018年トロ・ロッソピエール・ガスリーブレンドン・ハートレイ
2019年レッドブルピエール・ガスリーアレクサンダー・アルボン
2019年ウィリアムズロバート・クビサジョージ・ラッセル
2020年トロ・ロッソピエール・ガスリーダニール・クビアト
2021年トロ・ロッソピエール・ガスリー角田裕毅

この一覧を見ると、チームとしてはロータスが、ドライバーではガスリーが、良い仕事をしたと言える。あるいは、グロージャンよ、何故勝てなかったのだ?!とも。
まずはロータスF1チームから順に見ていく。
このチームはトールマン〜ベネトン〜ルノーの流れを汲み、その後ルノーに返り咲いて2021年からはアルピーヌに名前を変えたチームであり、SVC メンバーズ・チーム・リストの中での最新チーム、後にケータハムとなったロータス・レーシング/チーム・ロータスとは別のチームである。
同チームには2010年代唯一の入会者マルドナドが在籍した2014-2015年にチームメイトとしてグロージャンがいた。
また、その前の2013年、マルドナドの前任者で腰を痛めたキミ・ライコネンに代わって、第18戦と最終第19戦のみ、2008年第11戦ハンガリーGPで SVC 会員となったコバライネンがグロージャンのチームメイトとしてロータスF1チームから出走している。
よって、2021年現在アメリカ・インディーカーシリーズに参戦中のグロージャンがF1復帰を果たし、1勝を挙げることができたとしたら(そして2勝目を挙げなければ)、2013年は「1シーズンに SVC 《現役》会員と未加入会員を擁したチーム(レア度★★)」、2014-2015年は「《シーズンを通して》SVC《現役》会員と未加入会員を《同時に》擁したチーム(レア度★★★★)」となり、SVC メンバーズ・チーム・リストに3年連続でロータスF1チームが加わることになる。
だが、インディで好成績を収め始めたとは言え、グロージャンのF1復帰は夢のような話であり、かつ優勝となると妄想の域を出ない夢物語である。「いやいや、グロージャンもなかなかいい走りをしてたけどマシンがダメだったんだよ」と思いたいところではあるが、ルノー時代の相方フェルナンド・アロンソ(2009年)とライコネン(2012-2013年)は別格としても、2013年にライコネンの代役として2戦だけ組んだコバライネンやロータスで丸2年チームメイトだったマルドナドでさえもが別のチームで一度は勝っているというデータを見てしまうと、やはり彼自身が持ってなかったとしか言いようがない。
次は2016年のマノー。
オコンのチームメイトとしてウェーレインが在籍していたが、この年のマノーにはもう一人のドライバーが乗っている。F1史上初のイスラム教徒のドライバーでありラマダーン期間中は断食してレースに臨みレース中の水分補給も行わないことで有名なリオ・ハリアントだ。彼は、2019年はブランパンGT・ワールド・チャレンジ・アジアに、2020年はアジアン・ル・マン・シリーズに参戦したが、2021年はレギュラードライバーとしての参加カテゴリー/チームはない。また、2016年のマノーではシーズン中彼に替わって乗ったのがエステバン・オコンだったため、もしハリアントがF1復帰して優勝しても、「1シーズンに SVC 未加入会員を複数擁したチーム(レア度★)」にしかならない。
達成してもレア度が低く、ウエーレインのF1復帰の可能性が低いこともあり、このチームには期待しない方が良さそうである。
続いてトロ・ロッソとレッドブル。
ドライバーの首を挿げ替える事で定評のあるこのグループチームは、そのお陰もあってかリスト入りする可能性が高いように見える。兎に角ドライバーの数が多いのだ。
2021年中にも勝てそうなサインツと、日本人的にはいつかは勝って欲しい角田の現役レギュラードライバー陣を始め、アルピーヌのリザーブドライバーを務めるクビアトにもレギュラー復帰の可能性があり、またレッドブル陣営のF1リザーブと掛け持ちで参戦しているDTMの2021年第4戦で早くもポール・トゥ・ウィンを達成したアルボンに至っては2021年F1第14戦イタリアGP前に来季からのウィリアムズ・レギュラードライバー入りが発表されたとことから、非常にリスト入りする可能性が高い2チームと言えよう。
更に、FIA世界耐久選手権(WEC)で、F1以前にも2度チャンピオンに、そしてF1後の2021年も8月現在総合トップになっており、ル・マンでもF1前後の2017年と2021年に優勝しているブレンドン・ハートレイの存在も忘れてはならない。
このように、現役、リザーブ、他カテゴリーレギュラーと全方位に餌を撒いてあるのだが、彼らがF1で勝ったとしたら寧ろ1勝のみに終わる可能性が低いことも事実である。今やフェラーリのドライバーとなったサインツが悪い意味でアレジ級なのかどうかに係ってくるだろう。そして何よりも、全てのドライバーに絡んでいるガスリーが2勝目を上げてしまえば、この候補チームリストのエントリーは(一気にトロ・ロッソとレッドブルが抜けて)半分になってしまう。
最後は2019年のウィリアムズ。
時期 SVC 新入会員最有力候補ラッセルがクビサと組んでいたという事実は、後々語られる伝説になるかもしれない。
とは言え、ラッセルなら入会後すぐに退会してしまうはずだ。何故なら、入会時点のチームはウィリアムズではなく「あのチーム」である可能性が高いからだ。
…と、2021年第11戦ハンガリーGP終了時点で書いていたところ、3戦後の第14戦イタリアGP直前に来季からのラッセルのメルセデス入りが発表されたことによって、来季早々にも候補チームリストから2019年のウィリアムズが抜けることが現実味を帯びてしまった。そう簡単には SVC メンバーズ・チームは誕生しないのである。
このように、SVC メンバーズ・チームとなるのは極めて困難なことであり、ここ10年以内でも2010-2012年にジェンソン・バトンとルイス・ハミルトンを擁したマクラーレン、2014年にフェルナンド・アロンソとキミ・ライコネンを擁したフェラーリ、2014-2016年にアロンソとバトンを擁したマクラーレン、2015-2018年にライコネンとセバスチャン・ベッテルを擁したフェラーリ等、「ワールドチャンピオンのみで構成されたチーム」や「1シーズンにワールドチャンピオンを複数擁したチーム」になる方が余程簡単そうに見える。
どちらがエラいかどうかはさて置き、ワールドチャンピオンのみのチームよりレア度の高い SVC メンバーズ・チームの方がカッコイイのは間違い無いのである。
「プロストとデーモン・ヒルが組んだ1993年のウィリアムズが好きだった」とか「2007年のマクラーレンは2度の王者アロンソと新人ハミルトンという組み合わせが最高だった」とか言ってないで、「アレジ & トゥルーリの2001年後半のジョーダンがカッコ良かった」とか「2010年のロータス・レーシングはトゥルーリ & コバライネンという奇跡の組み合わせがシブかった」などと堂々と言って退けよう!(あなたの貴重なF1ファン仲間を失うことになっても当サイトにのせいではありません)